ノラ猫ism

今日もノラ猫のように、凛々しくハングリーに、生きる

論文レビュー:戦略的な事業撤退のプロセス理論

      2015/12/28

151220

Fading Memories: A process Theory of Strategic Business Exit in Dynamic Environments

Burgelman, R. A.
Administrative Science Quarterly(1994)

Introduction

持続する企業もあれば、持続しない企業もあるのはなぜか?ーーそれは、外部からの事業の選択を迫る圧力に対処する「内部淘汰プロセス」があるかどうかによるという主張がある(Burgelman, 1991; Van de Ven, 1992)。しかし、この主張は、既存事業からどのように戦略的に撤退するのか?、既存事業に関連するコア・コンピテンスをどのように再配置するのか?という疑問には答えない。事業の撤退に関する組織内プロセスに焦点をあてた先行研究はほとんどない。

この論文では、インテルがDRAN事業から撤退してEPROM事業に注力することで、メモリー企業からミニコンミュータ企業に変化したプロセスについてフィールド・リサーチを行い、戦略的な事業撤退を導くプロセスを明らかにする。

リサーチ・クエスチョン

①なぜ、インテルのコア・コンピテンスはDRAM産業の競争原理から逸れて発展したのか?
②なぜ、トップマネジメントがDRAM事業から撤退する必要性を判断するのに数年もかかったのか?
③なぜ、ミドルマネジメントが企業戦略から逸れて、DRAM産業からより収益性の高いマイクロプロセッサ事業への生産資源の投資へとシフトできたのか?
④企業戦略が流動的であっても、インテルの戦略的意思決定を可能にする「内部淘汰プロセス」が果たす役割とは何か?

概念的フレームワーク(Conceptual Framework)

戦略的事業撤退のステージ(Stages of strategic business exit)

この研究では、事業撤退プロセスは段階的に行われることが明らかになった。①DRAM産業での成功 → ②競争激化 → ③社内での資源争奪競争 → ④トップマネジメントのDRAM事業の成長性への懐疑 → ⑤DRAM事業撤退の意思決定と実行 → ⑥新しい全社戦略の宣言

戦略的事業撤退を駆り立てる力(Forces driving strategic business exit)

unnamed[1]

(出所)Burgelman, R. A.(1994)

①競争優位の基礎(Basis of competitive advantage)
②コア・コンピテンス(Distinctive competence)
③公式の企業戦略(Official corporate strategy)
④戦略的行動(Strategic action)
⑤内部の自然淘汰環境(Internal selectioon environment)

この論文から得られた知見

この論文のメインとなる考察とは異なるものもありますが、私が学んだことを書きます。

(1)内部淘汰プロセスが果たす役割

マーケットメカニズムが社内にビルドインされていると、事業が潰れても会社が生き残ることを可能にする。

(2)事業シナジーとイノベーションのジレンマ

事業シナジーを生み出すという視点からは、研究開発部門と生産工場を同一敷地内に置いて大量生産を可能にすることが競争優位につながると考えられる。一方、それが研究開発部門のイノベーションを阻害する要因となる可能性もある。

(3)利益配当の変化

新製品を開発した場合、はじめは設計者が多くの利益配当を受ける。支配的な設計(dominant design)が決まると、利益配当が設計者から製造者と消費者に移る。

 - 論文レビュー ,