論文レビュー:ダイナミック・ケイパビリティ理論の5つのコンセプト
2015/12/28
Trying to Become a Different Type of Company: Dynamic Capability at Smith Corona
Danneels, E.
Strategic Management Journal(2010)
Abstract
かつてタイプライターの世界トップクラスのメーカーであったスミス・コロナ社(Smith Corona)は、主要な製品カテゴリーの消滅に直面し、dynamic capabirityを行う必要性に迫られた。スミス・コロナ社の動きに関する過去20年間の研究は、同社が既存資源のレバレッジ、新しい資源の創出、外部資源へのアクセス、資源の放棄により、どのように資源依存を変えようとしたかを明らかにした。この研究では、ケース・メソッドを使うことで、実証事例を題材としてダイナミック・ケイパビリティ理論を前進させる。スミス・コロナ社のケースは、ダイナミック・ケイパビリティにより生じる資源変化プロセスに対して豊富な洞察を与え、資源の認識(resource cognition)がダイナミック・ケイパビリティ理論における抜け漏れた要素であることを示す。
Conceptual Framework
ダイナミック・ケイパビリティ理論のコア・コンセプトは次の5つである。
①Resource alteration mode: leveraging existing resources(既存資源のレバレッジ)
②Resource alteration mode: creating new resource(新しい資源の創出)
③Resource alteration mode: accessing external resources(外部資源へのアクセス)
④Resource alteration mode: releasing resources(資源の放棄)
⑤Resource cognition(資源の認識)
この論文から得られた知見
1つの企業の中で、新しいリソースの開拓と既存リソースの活用を両立することは難しい。両立するための方法として、①時間を分ける、②チームを分ける、③場所を分ける(例:本部⇄支部など)がある。
スミス・コロナ社は、トップマネジメントがブランドを残そうとして失敗した。一方、成功した企業は製造技術を残そうとした。
資源は、何を持っているかとどうやって使うかは別物である。また、資金があってもビジョンがなければ、資源の組み替えはできない。