論文レビュー:環境変化に対する企業の反応
2015/12/28
Unbundling The Structure of Inertia: Resource Versus Routine Rigidity
Gilbert, C. G.
Academy of Management Journal(2005)
Abstract
この論文では、組織における慣性の構造を2つのカテゴリーに分解する。1つは資源配分パターンの変化に失敗する「資源配分の硬直性(resource rigidity)」、もう1つは組織内での資源活用のプロセスに失敗する「ルーティン業務の硬直性(routine rigidity)」である。非連続的な変化が起きたとき、研究者がこれらの区別の認識に失敗することは、組織の慣性に対する脅威認識の効果に関する見解の対立を生み出す。この論文では、デジタルメディアの成長に対する新聞社の反応についてのフィールドデータを使い、脅威への強い認識は資源配分の硬直性を乗り越えるが、ルーティン業務の硬直性を助長することを明らかにする。また、この異なる行動を乗り越えるメカニズムを探求する解釈モデルを開発した。
この論文から得られた知見
- 同じハーバード大学のBower研究室の兄弟子Christensen(1996)のイノベーションのジレンマ(外部環境の変化に直面したときに資源配分の硬直性が生じる)に対して、Gilbert(2005)は資源配分の硬直性は乗り越えることができるがルーティン業務の硬直性を助長すると主張した。
- 企業は、新しい技術によって既存のマーケットポジションが崩れる(カニばる)場合には、新しい技術には投資しない。
- 組織のルーティンは、設計する人と実行する人が違うため、外部環境が変化しても、変更することが難しくなる。
- シナジー効果を考えると統合したくなるが、イノベーションのジレンマを乗り越えるポイントは分割(分社化)である。なぜならば、育つ前に統合すると育たないからである。