論文レビュー:イノベーションの拡大を阻害する要因
2015/12/28
The Nonspread of Inovation: The Mediating Role of Professionals
Ferlie, E., Fitzgerald, L., Wood, M., Hawkins, C.
Academy of Management Journal, 2005
リサーチ・クエスチョン
この論文は、イギリスのヘルスケア業界の8つのケースを題材に、「強力な科学的根拠で裏付けされるときでさえ、なぜイノベーションはすぐには広がらないのだろうか?」というリサーチ・クエスチョンについて検証する事例研究である。
先行研究
イノベーションの拡大について、Roger(1995: 163)は、「知識(knowledge)」→「説得(persuasion)」→「決定(decision)」→「実行(implementation)」→「確認(confirmation)」という経路で線形(linear and stagelike)に拡大すると主張する。これに対して、Van de Ven, Polley, Garud, & Venkataraman(1999)は、イノベーションは線形に拡大するのではなく、もっと乱雑(messy)でダイナミックに拡大すると主張する。
考察
この論文では、Van de Ven, Polley, Garud, & Venkataraman(1999)の主張を発展させ、複数の専門性を有する職場ではイノベーションが拡大しないことを理論化した。たとえば、病院では、医者、看護師、臨床技師のように複数の専門性を有する人がいるため、社会性や認識の違いにより境界が生まれ、イノベーションの拡大が妨害されるのである。
日本では、ジェネリック薬が、どんなに科学的根拠が強くても普及しない病院があることなどに当てはまるといえる。